介護職では、思わぬことが起きたり、利用者との関係で悩むことがあるということを前もって知っておいたほうが良い。
具体的な例をあげると、利用者から私物を盗んだなどと疑われることはよくあるようだ。
認知症の方に盗られ妄想の症状が出る場合があるのは有名だが、一見認知症とは思えない利用者が疑ってくることもある。
このようなことがあると、「自分の対応が誤っていたのか」と自分を責めたり、「一生懸命介護していた私を疑うなんて」と利用者を責める気持ちになりつらく感じることもあるかもしれない。
大切な知識として押さえておくべきことは、利用者からそのような訴えが出るのは利用者の脳に何らかの異常や病気が生じているからだと承知しておくこと。
さらに、利用者の発言に気持ちが動揺してしまうことは当然のことであると知っておくことである。
高齢期になると、身近な人が亡くなったり病気になったり、喪失感や孤独感を感じることが若い頃より増えていく。
そのことで自信を失ったり不安感が強くなったりすることで猜疑心が強くなる人も出てきて、認知症の場合は、それがより強く出る。
被害妄想は、身近に介護する人に対して出やすいと言われている。
また介護は感情が揺れ動きやすい「感情労働」とも言われる。
職員は利用者の役に立ち感謝され喜んだり、思わぬことを利用者から言われ傷つくことも少なくないストレスが溜まりやすい環境で働いている。
利用者から疑いを掛けられてしまった時は、速やかに上司に報告し、どのように対応するかを考えると良いだろう。
普通なら疑われた職員が責められることはない。
妄想をもたれにくいようにするには、利用者と適度な距離感を保って介護することがポイントだが、どうやっても妄想が出現してしまうこともある。
経験を積み重ねれば、より冷静に対応できるようになってくる。